〜『和』のかたちを確立させた”軽量可動式パネル”〜




 襖の誕生は平安初期にさかのぼる。当時の建築様式、寝殿造の住空間を仕切っていたのは几帳や屏風。出入り口には一端を軸にして吊り上げる蔀戸が使われていた。その後、平安時代のなかばに蔀戸の代わりに横滑り式の鳥居障子が導入される。これが襖の原点となり、室町時代に成立した書院造りによって広く普及した。
 襖に張られた布や和紙は、遮音性、断熱性、吸湿性などの優れた機能だけでなく、様々な装飾の場を提供した。襖に絵を描くという発想は中世の屏風に既にあるが、襖を壁と見立てて描いたのは桃山時代の書院座敷から。大和絵や花鳥画など美しい障壁画には、その時代、時代を生きた日本人の生活文化が表現されてきた。